2016年08月04日

571  別 世 界 2 ( 救 わ れ る )

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岩から流れ落ちる清水

 どこにも避難しようがないこの暑さと同じように、やりきれない事件が相模原の方で起こったと報道されている。ほとんど抵抗もできない障害者の方の寝込みを襲って最悪の殺戮を行った若者のニュースが、この暑さ以上にいたたまれない思いを私にも運んできた。

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愛嬌2

 私の父親も戦争で両足を失った1級の身体障害者であった。スポーツが好きで得意でもあった人であったので、さぞかし残念な思いで以後の半生を過ごしたことであろう。いくら親子でも、当事者でなければ分からない悔しい思いがたくさんあったことであろうことしか、私には、推測はできない。

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苔?羊歯?

 母親も少しずつ老いを深め、一方、大人に近づいていった私が高校生の頃は、父親の足が痛み始めると、母親に代わって北宇和病院までタクシーで父を運び、父を背負って診察室まで行くのが、私の役目になっていた。

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羊歯1

 待合室に居る他の患者さんたちが、両足のない父やそれを背負っている私を見る視線は、明らかに好奇な眼差しが混ざっているのを、背中で感じつつ診察室を目指した。

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苔1

 決まって父の治療は、痛みを止めるためにモルヒネを打ち、痛みが治まった頃に、また、タクシーで帰るというパターンであった。ある時、医者が、私を別室に呼び、モルヒネを打った後も、痛みが治まる気配もなく、2本目のモルヒネを要求する父の病状についての説明をしてくれたことがあった。


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羊歯2

 父の足の痛みは、「幻視痛(げんしつう)」というもので、足を失くしたことを残念に思う気持ちの大きい人は、その思いが大きければ大きいほど、この幻(まぼろし)の痛みに苦しむのだということであった。

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愛嬌3

 父の足の痛みは、早朝から仕事に向かわなければならない母親を睡眠不足にし、私をも睡眠不足にするやっかいな代物であった。それは、昼間寝たい時に好きなだけ寝て、一晩中、足が痛いと泣き叫び、家族を眠らせず苦しめるものでもあったのだ。私はいい加減腹が立って、内心もう止めて欲しいと思っていた。しかし、その痛みが幻視痛であることを知り、父の心の病がどれだけ重いのかということを少しだけ理解し、もっと父をいたわってあげることが大切だと気づいた。


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「こけむしろ」看板

 相模原で取り返しのつかない殺戮劇をやってしまった若者、その考えは、憎むに余りあり、被害者家族のことを思うと、本当にいたたまれない思いになる。それでもなお、彼もまた、心を病む障害者の1人であったことにも思いが及ぶ。別世界のマイナスイオンに心癒やされて、また、暑きエリアに戻り、一歩を踏み出す勇気がこぼれ落ちないように大洲に向かった。
posted by tentijin at 07:35| 愛媛 ☁| Comment(4) | 随想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
真夏の別空間ですね。からから天気では、このような雰囲気はでません。夕立の後などが最高です。女性の方たちの訪問が多いようです。ここの良さは勿論ですが、松野町の店の良さもありますよ。
苔とシダの区別はわかりません。5,6月には花々でいっぱいになります。季節を変え、行かれると良いと思います。私は雪景色が・・・しかし、宇和の積雪量を考えると・・・(笑い)
Posted by 鬼城 at 2016年08月05日 08:51
鬼城様
 今は、花も紅葉もありませんが、どちらの木も植えてあるようなので、雪景色も含めて、オールシーズン楽しめるみたいですね。下界を忘れに来るのにいい所のように感じました。
Posted by tentijin at 2016年08月05日 16:44
 本当に遣る瀬無い事件が起きてしまいましたね。被害者の方の無念さと共に、もしかしたらこんな事件が起きた事に、恐れ戦き不安に陥っている色々な立場の人が居るのではと思ったりします。
 私も、朝早くから奇妙な声を出して鳴くカラスに不気味なものを感じたりします。
 そういう時に、こんな心が落ち着く風景や空気に出会うとホットしますね。
 経験してこそ、その痛みが解ると思います。
でも、これからの余生はのんびり、時々楽しくありたいです。
Posted by 吉野の食いしんぼう at 2016年08月05日 20:44
吉野の食いしんぼう様
 今回の事件は、八墓村のモデルになった津山事件以来と聞きました。よく考えると、様々な意味で、無事にここまで生きてこれたことに感謝ですね。何もないということは、本当に奇跡のように運が良いことなのかもしれませんよね。私も、良き未来を心から願います。
Posted by tentijin at 2016年08月05日 21:15
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